About
アートひかりとは
私たちは、静岡県島田市伊久美を拠点に、各地で演劇活動を行っている「アートひかり」という団体です。地域における演劇文化の裾野拡大と活性を志し、自分たちで公演を行うほか、色んなフェスティバルに参加したり、演劇まつりを企画・開催したりしながら、地域のコミュニティを渡る演劇活動を続けています。
会場はいつも、劇場に限らず、地域の元茶工場や神社仏閣、飲食店、旅館など、あらゆる場所で公演を行っています。
路地裏の舞台にようこそ2023 参加公演 「瞼の母」@成田屋(大阪市)
2021年のコロナ禍に始まったフェス。西成の有名なおでん屋さんご店主も一緒に作品作り
もんぜんまち劇場参加公演(2022年)「極付 国定忠治」@ファミリー旅館梅岡(長野市)
旅館を劇場にという旅館オーナーと一緒に、建物全部を使っての移動演劇を開催
耕す演劇プロジェクトについて 〜伊久美とお茶と演劇と〜
静岡県島田市の北部、中山間地域にある伊久美は、豊かな自然に囲まれた地域です。現在は空き家も増えていますが、古い歴史では、武田軍にとっての駿河遠州支配における重要な山村として、戦乱に巻き込まれたこともありました。また、幕末期、横浜貿易にいち早く参入したのは伊久美村の茶農家たちだったという歴史があります。横浜港に持ち込まれたお茶は「JAPAN TEA」として、外国商館に高く評価され、国際商品として高値取引されていきました。
しかし、そんな輝かしい歴史にたどり着くまでには、山の茶農家たちの取り組みと、元幕臣達の奮闘がありました。それらの史実を元に描かれた歴史小説「大井川連環の譜 近代日本茶物語」を原作とした演劇作品「JapanTea物語」を、ご当地伊久美で上演し、郷土でもあまり知られていない<お茶>の歴史、村の存続をかけた先人達の熱い<ドラマ>を、広く届けていきたいと考えています。
「JapanTea物語」を皮切りに、伊久美地区に今も多く残る古民家や茶部屋、そして周囲の美しい茶畑の風景と共に、あり続けることができる演劇作品を作っていきたい・・・そして演劇そのものも、気軽に誰でも観劇、体験、できるような環境を育てていきたい・・・そんな夢を描いています。
活動の背景
アートひかりでは、これまで、地域の歴史・知的財産をテーマとした演劇作品を創作し、その土地ならではの会場で、上演する活動を行ってきました。そんな中、出会ったのが、島田市伊久美に残る輝かしい茶の歴史を描いた「大井川連環の譜 近代日本茶物語」(西野真 著)という歴史小説でした。
著者の西野真さんは、茶業を営む傍ら、郷土史家として各地で講演活動もされている方で、地元静岡でもあまり知られていない郷土の茶の歴史を本に残しておかなければ、という使命からこの本を出版されました。現代の慣れ親しんだ<お茶>のルーツが伊久美にあったという歴史が描かれ、また、それが小説の形式で書かれていることから、これは演劇作品にできるのではと思い立ち、創作したのが2020年の秋のことです。
上演は、島田市の隣の藤枝市で茶町という茶商が集まる地域の、伊豆石でできた蔵(石の蔵)で行いました。この蔵も、開国で港ができ、茶の輸出が盛んだった頃の遺産で、茶の倉庫として使われていた蔵でした。
その上演の時に伊久美の方が観にきてくださったのがきっかけで、翌年に伊久美での上演を計画するも、コロナ禍で中止、その次の年の2022年には台風の甚大な被害で伊久美での上演ができなくなり、茶町の元茶工場に会場変更して上演となりました。
そんな経験を経て、ようやく2023年、伊久美で上演することができました。会場は伊久美のクラフトビール工場、193 VALLEY BREWINGさんの屋外にて。
公演は二日間。演出の都合上、会場が屋外の場合は、日暮に終演する時間帯で上演したいため、1日1回公演。客席数は50席なので、全部で100名ほどの観客の皆さまが駆けつけてくださいました。
まだまだ、この演劇作品を知らない人はたくさんいらっしゃいます。より多くの方々にこの演劇をお届けして、高級茶の茶産地化を成し遂げた先人達の功績や、郷土の歴史に触れてほしいと願っています。
現代に必要な再発見がありそうだ
今でこそ、過疎が進み、昨年度で小学校閉校、幼稚園閉園と続いた中山間地域の伊久美ですが、そこに住む人々の熱気や緊張感は、古代から脈々と受け継がれています。そんな伊久美には、これからの持続可能な社会を考える時に、何か大事なエッセンスが散りばめられているような、何か大切な再発見があるような気がしています。と私(仲田)は感じながら生活しています。
そんな伊久美で、地域を題材とした演劇公演をきっかけに、少しずつ人の往来を増やし、自然が豊かなだけではなく、文化芸術も伊久美の地で育てようとしている小さな芽を、大切に育てていきたいと考えています。関わってくださる、足を運んでくださるすべての皆さまによって育っていくプロジェクトですので、応援、見守っていただけたら幸いです。